モジュラー型スマートフォンと 特許権の問題を考察〜部品と完成品の特許権〜

Googleのモジュラースマホ・コンセプト(Project Ara )は、モジュラーを組み合わせた構成のスマートフォンを提供するアイデアです。

Araのメリット

モジュールは、ディスプレイ、バッテリー、カメラ、プロセッサなどの多種多様なものがあり得、各モジュールには互換性があります。

特徴は、無限に機能をカスタマイズできることで、組み合わせ方により、形や大きさも変更可能です。

だれでもスマホの一部となるパーツを作製できるため、サードパーティーよる開発が促進されます。

なお、プロダクトデザインは、NEW DEAL DESIGNが担当でプロトタイプにはSpiralがあります。

Araと特許法との関係はどうなるか

モジュールの売買など

各モジュールは、特許出願して一定の要件を満たせば、特許権の対象となります。

しかし、その売買と特許権の関係については、通常のコンピューター製品と同様の取り扱いとなります。

すなわち、権利者の意思で市場に置かれた製品に関する権利は、法的には「消尽」したと判断されますので、特に注意することは無いようです。

※特許権者は、権利に基づいてモジュールを売る、ライセンスするなどにより、流通のはじめの時点で利益を得る機会は確保されています。したがって、モジュールの買い手のその後の行為から利益を得ようとすることは不適切との考えのもと、権利は消尽した(用い尽くされて消えた)と判断されます(BBS最高裁判決の傍論部分の説示を参照)。

しかし、モジュールを有するスマートフォン全体についての特許権も存在する場合、話は面白くなります。

なお、以下では、事業者の行為のみを考えます。特許違反の有無を検討する際、消費者が行う行為は特許法違反の恐れはないからです(特許法68条1項)。

モジュールの組み立て行為

モジュールを有するスマートフォン全体についての特許権が存在する場合、そのモジュールを使ってスマホを作製する行為は、事業として行うのであれば、一見すると、特許発明の生産に該当するため(特許法2条)、特許権の侵害行為ではないかとの疑義が生じます。

モジュールスマホ市場が伸びてくれば、大手キャリアでは、モジュール単品を販売するのみならず、組み立てるサービスも付随して実施すると思いますので、問題になるかもしれません。市場の混乱を防止するためには、権利関係をどう考えたらよいでしょうか?

”権利者の同意があると考える”

モジュールは、組み立てられることを前提に売られます。

したがって、権利者は、自分の意思で市場に流通させたモジュールについては、組み立てる行為について同意しているものと考えることができるでしょう(いわゆる黙示の実施許諾)。

ただし、この考え方は、契約をベースにしています(すなわち売手と買手の間の合意)。

したがって、たとえば「事業者による組み立て行為は認めない」、あるいは、「消費者による組み立てのみ認める」と権利者が明示したときに、事業者の組み立て行為は特許権の行使対象になります。すなわち、ユーザーが組み立てる必要が出てくるという現実的な問題が発生します。

また、製品が転々と流通したときに、明示された内容を把握できなかった事業者が、知らずにスマホを組み立てて権利侵害してしまう危険があります。

この考え方を取ると、ユーザーの弊害が大きく、モジュール部品の流通を阻害しそうです。

※もちろん、逆に言えば、権利者が流通をコントロールできる点が、権利者にはメリットとなります。

一方で、下記の考え方もできます。

“消尽の考え方を適用する”

上記のBBS最高裁判決で説示された消尽理論は、権利の対象が「モジュール」単体のときにはそのまま当てはまりますが、他方、権利の対象が「モジュールを含むスマホ全体」のときには、上記のような消尽理論は、そのまま当てはまりません。

しかし、スマホ全体についての権利者が、自分の意思で、当該モジュール部品を供給するのであれば、その流通のときに利益を確保できるという理由で、スマホ全体についての権利は消尽するものとして取り扱えば良いと思われます。

なお、アメリカの連邦最高裁は、似たような事例で2008年の判決において消尽理論を採用しています。

最後に;間接侵害との関係は?

いわゆる間接侵害が具体的に問題となるのは、モジュール部品について直接侵害が成立しない状況、すなわち、「モジュール単品についての特許権がない場合であって、そのモジュールを含むスマホ全体には特許権がある」という状況に限定されますが、モジュール部品が、単なる部品を超えて、特許法101条の「のみ品」や「不可欠品」に該当するとき、権利者の意思によらずに第三者が生産・流通させたモジュール部品を生産するなどの行為は侵害行為とみなされます。