特許法1条の解説

条文
 この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

条文構造
 発明の保護+発明の利用→ 発明の奨励→産業の発達

第1条は特許法の目的は「発明の奨励」であり、究極的な目的が「産業の発達」であると定めています。

そして、発明を奨励するための手段として、「発明の保護」と「発明の利用」を挙げています。


解説

特許法は、産業が発達すれば日本経済がよくなり、人々の暮らしが豊かになる、という発想のもとに定められています。

そして、産業が発達するには、新しいアイデアが生まれ、よい製品やサービスが人の手によって発明されつづけることが必要です。

しかし、多くの人は、見返りがないと、あんまり頑張りません。

そこで、人々のやる気を刺激することが重要です。

やる気を刺激するには、発明者がお金を得られる制度にするのがいい方法です。

お金を与える制度の一つには、発明をした人に国家が報奨金を与えるという制度が考えられます。

この方法は、一見すると簡単な制度なのですが、問題があります。

それは、いくら報奨金を与えるのかということです。

一定額をあげる制度にすると、どんなに素晴らしい発明でも一定の金銭しか得られず、素晴らしい発明をした発明者から不満が出そうです。

一方で、発明のレベルに合わせたお金をあげる制度にしても、発明の段階で、その金銭的価値を評価するのは大変です。

そこで特許法は、発明の金銭的価値の評価を市場に委ねました

発明者だけが、その発明を使えるような制度にして、発明者が市場からお金を得られる制度にしたのです。

すなわち、特許前は、発明者が特許を受けることができ(29条1項柱書)、特許を受ける権利を自由に他人に売る(33条1項)などでき、特許後は、特許権者だけが発明を実施でき(68条)、他人に特許権を売る、あるいはライセンスする(77条など)などできるという制度です。

この制度(=「発明の保護」)によって、人々は、市場から利益を得ることを期待して、よりよい発明をしようと頑張るのです。

(「産業の発達」と「発明の奨励」の関係を、このように説く学者としては、北大の田村先生が有名です(いわゆるインセンティブ論を展開しています))。

そして、発明が実施された商品やサービスが市場に出回る(=「発明の利用」)により、産業の発達が達成されるのです。

なお、特許法は、出願された発明や、特許された発明が公開される制度をとっています。
その公開された情報を新しい発明に利用することは、よく発明の文献的利用と呼ばれます。
発明の実施による利用以外に、この文献的利用も第1条の「発明の利用」に含めて考える人が多いです。