職務該当性(昭和43年12月13日、最高裁昭和43年12月13日第2小法廷判決

事件名

石炭窒素の製造炉事件

争点

使用者等が、従業者等に対してある発明を完成すべき旨の具体的な指示や命令をしていなかった場合、「その発明をするに至った行為」は、従業者等の「職務」にあたるか?

背景

旧法の事件です。

事実関係

・Aは、技術部門担当の最高責任者。
・Aは、使用者から具体的な指示がないまま、使用者Yの人材、設備、資金を利用して考案をした。
・Aは出願して登録を受けた。
・Aが死んだ後、権利を相続したXは、考案を実施する使用者Yに、損害賠償請求をした。

・亡くなったAさんがした考案について、使用者は(現行法でいう35条1項の)通常実施権を有することを主張した。

・一審と二審は、いずれも、使用者Yが通常実施権を有するとして、Xの請求を認めなかった。

本判決の結論

・棄却

・判旨(一部省略)

「原判決(その引用する第一審判決を含む。)の適法に確定した事実関係のもとにおいて、上告人の先代であるAは、同人が石灰窒素の製造炉に関する本件考案を完成するに至つた昭和26年3月当時、

石灰窒素等の製造販売を業とする被上告会社(Y)の技術部門担当の最高責任者としての地位にあつたものであり、かつ、その地位にもとづき、被上告会社における石灰窒素の生産の向上を図るため、その前提条件である石灰窒素の製造炉の改良考案を試み、その効率を高めるように努力すべき具体的任務を有していたものであるから、

Aが本件考案を完成するに至つた行為は、Aの被上告会社(Y)の役員としての任務に属するものであつたというべきであり、

したがつて、被上告会社(Y)は、本件実用新案につき、旧実用新案法(大正10年法97号)26条、旧特許法(大正10年法96号)14条2項にもとづく実施権を有する、とした原審の解釈判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、独自の見解を主張するものにすぎず、採用する
ことができない。」

解説~本判決の意味~ (百選66~67頁より)

本判決は、使用者Y(会社Y)の方針や、Aの会社Yにおける地位に基づいて判断しています。
なので、本判決は、具体的な指示や命令がある場合に「職務」にあたるかという法律的な問題には答えは出していません、実質的にはこれを否定したものといえるでしょう。

本判決の後も、裁判例は「職務」に該当する場合を、具体的な指示や命令がある場合に限定していないようです。

補足

百選で執筆教授は、「職務」に該当するか否かにおいて、使用者の資源を利用したかどうかは無関係に判断されるべきである、という見解を述べています。
なぜなら、使用者は、発明完成に、資源が利用されなかったから職務発明が成立しないとすると、発明のための投資意欲を失いかねないからだそうです。

ほかにも、勤務時間外の場合はどうか、自己の費用でされた場合はどうか、試験研究を職務としない者についてはどうか、など、「職務」該当性の判断は、事案ごとに考慮要素が大きくちがうので、どうしても一様な解釈ではうまくいかないでしょう。